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安全に関わる建築規制の違反

 エンジニアのメツラーは、彼のクライアントのスミスが売り出そうとしているあるアパートに、構造的な不備がないことを確証するために雇われていた。スミスとの取り決めに従って、メツラーはその報告を公開しないつもりだった。スミスはメツラーに対し、その建物は現在の状況のままで、いかなる修繕や補修もなしに売りに出されるということを明言していた。
 メツラーはその建物が構造上問題がないと結論付けた。しかしスミスはメツラーに対して、実は電気系統と機械系統に関して、建築規制の違反があることを打ち明けた。メツラーは電気エンジニアでも機械エンジニアでもないとはいえ、彼はその問題が危害を生じさせうることを認識し、この事実をスミスに通知した。報告の中で、メツラーは簡潔に、スミスとのこれらの欠陥についての会話に言及した。しかし彼はその違反を第三者に報告はしなかった。
 メツラーのスミスに対する義務は果たされたのだろうか?公共の安全に対するメツラーの職業的責任についてはどうか?以上では与えられていない、あなたの判断に重要な相違をもたらすような情報はあるか?
―NSPE倫理審査会事例89-7番からの改作

(訳 西村慶人 北海道大学文学研究科後期博士課程)