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代価が支払われていないコンサルティングの成果の利用

州当局は太陽エネルギーを利用した施設建築の検討を始めた。太陽エネルギーに関する設計の専門知識が要求されたため、州はモロー社とコンタクトをとり、この種の施設の構想を連邦当局に提示した。モロー社は州当局に予備的なデータを提出したが、そのときそこにはそのプロジェクトの追加資金を確保するための提案書のデータが含まれていた。今回、州当局はモロー社と何度も非公式の議論を行い、そのプロジェクトが承認されたら契約もまた獲得できると会社側が信じるように誘導していた。
数ヶ月後、州当局はモロー社に、供給された公的、および私的な資金拠出がプロジェクト全体を資金供給するには不十分であると通達した。そしてモロー社に、より制限された範囲の施設の建築が可能かどうか調査するように依頼した。その設計の契約が獲得できるであろうという信頼を寄せていたので、モロー社はより制限された範囲でのプロジェクトの可能性について調査した。その調査費は数千ドルにのぼったが、これらは自社負担であった。そしてモロー社は、改訂された提案書を当局に提出した。
この時点で、州当局のモロー社への義務とはどのようなものだろうか。モロー社が州当局に対して期待しうる権利とはどのようなものだろうか。
その後、州の主任エンジニアはモロー社に、モロー社の全てのデータをバロン社に移譲し、バロン社と最初の交渉に入っていることを告げた。主任によれば、この交渉が不成立に終わったら当局はモロー社と交渉するために接触を行うとのことであった。バロン社はモローのデータを受けとったので、バロン社はモロー社がそのプロジェクトに介在していることには気づいていた。バロン社は、プロジェクトに関して議論したり、モロー社より先に州当局から委託を受けるために、モロー社と接触しようとすることはなかった。
州のエンジニアによる情報に対して、モロー社はどう応答すべきだろうか。モロー社はどうすべきだろうか。バロン社のモロー社に対する義務とはどんなものだろうか。

−NSPE事例77-5番からの改作

(訳 須長一幸 日本学術振興会特別研究員PD(北海道大学))