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原告と被告の両者に対するサービス提供

 アレクサンドラは、製造会社XYZに勤めていた。彼女は専門技術を生かして、特許訴訟において意見書を作成するために書類を検査するという仕事をしていた。彼女はそのようなサービスによって賃金を得ていたのである。数年後、XYZ社に対する製造物責任訴訟において原告の代理人を務めている弁護士のアレクシスが、彼女に接触してきた。その訴訟は、彼女が以前にかかわっていた特許訴訟とはいかなるかかわりもないものであった。
 アレクサンドラはアレクシス弁護士の提案を受け入れて、この訴訟において証言するべきか?
 アレクサンドラがこの事例において実際に原告のために証言したとしよう。そして、この裁判において反対尋問の際に、被告側弁護人が、アレクサンドラがかつてはXYZ社の弁護人を務めていて、現在は同社と係争中であるという関係について詰問してきたとしよう。ここでは、そのようなサービスの提供は不適切なのではないか、ということが含意されているのである。数年後、XYZ社はふたたび、先のいずれの訴訟案件とも関係のないある別な特許訴訟において、彼女が働くことを求めてきた。
 アレクサンドラはこの事例において証言すべきか?
―NSPE事例98-4番からの改作

(訳 西村慶人 北海道大学文学研究科後期博士課程)