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内部告発――市の技術者

 ある中規模都市の主任技師で、かつ公共事業の監督者として働くマリオは、その都市の行政の中では、責任のある立場にある唯一の有資格の専門エンジニアである。その都市には、いくつかの大規模食品加工工場がある。それらは缶詰を製造する期間中は大量の廃棄物を下水処理場に排出している。マリオは処理プラントに責任を負っており、ジェームズにその操業について報告している。
 マリオはジェームズに対して、処理プラントが雨季に発生しうる氾濫には耐えられないことを報告し、考えられるいくつかの解決策を提示した。それに対してジェームズは、そのときが来たらその問題を考えることにしよう、と答えた。
 マリオは個人的に、別な市の職員にプラントの問題を知らせた。しかしそのことによってジェームズはマリオを下水処理場に関する職から解き、代わりに普段はマリオの部下として働いている技術者のクリスを任命した。ジェームスはクリスに、報告はマリオを介することなく自分に直接行うように指示し、この取り決めをメモで確認した。マリオはそのメモの写しを受け取った。また、マリオは謹慎処分を受けた。彼は、もしこの件について更に詮索するようであれば、解雇されるという警告を受けた。
 マリオはその後継続して市の主任技師兼公共事業の監督者の任にあった。彼はもはや処理プラントに関していかなる責任も負ってはいないことは承知の上で、ジェームスに知られないようにしながらクリスに対するアドバイスを続けていた。冬の間、その都市では大嵐が発生することがあった。工場の廃水が現地の川に放出されない場合は、貯水池が氾濫しあらゆる廃棄物が川へと溢れ出してしまうということは明白であった。州法によれば、これは州の水質汚濁防止管理局へと報告しなければならない状況であった。
 あなたはこの状況に対してどう反応するだろうか?あなたはマリオの行動をどのように評価するか?ジェームズの行動についてはどうだろうか?クリスについてはどうだろうか?マリオのジェームズに対する、あるいは公共事業局に対する義務とはどのようなものだろうか?市の居住者の環境衛生に対するマリオの責任とはどのようなものだろうか?これらの責任はどのようにして同時に果たされるのだろうか?矛盾する事例においてはどちらが優先されるのだろうか?あなたにはどのような追加的な情報が必要か?その情報はあなたの評価にどのような違いをもたらすだろうか?
―NSPE事例88-6番からの改作

(訳 西村慶人 北海道大学文学研究科後期博士課程)