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政治運動と政治広告のためのスローガンの使用

事例1

アレクサンダーは、彼の業界では有名な専門エンジニアであった。彼は、彼の住む郡のある行政官庁に立候補することに決めた。公共の事柄に参加することは義務である、という彼の信念を実行するためである。彼は、スローガンとして「よりよい郡の設計者、アレクサンダー」を用いようと考えていた。
アレクサンダーは、このスローガンについてどう思うかバーナードに尋ねた。バーナードは彼のエンジニア仲間であったが、このスローガンは人を欺きかねないものであり、エンジニアという職業の名誉を汚しかねないとの懸念を持った。アレクサンダーは、このスローガンは彼の経歴を適正に利用したものであると信じていた。そこで、エンジニアとしての自己の能力は公共のために活用できるし、とくにその郡の専門職の雇用に関する法律の変革のために活用できると主張した。
アレクサンダーは、選挙運動の際にこのスローガンを用いるべきだろうか。
アレクサンダーとバーナードが考えなかったような、なにか別の要素はあるだろうか。

事例2

アルフレッドはある個人経営の開業者 で、新しい広告のスローガンを探していた。彼は専門のマーケティング・マネージャーのフランシーを雇い、助力を求めた。フランシーは、アルフレッドが自分自身を宣伝する際に「万能エンジニア」として売り込んだらどうかと示唆した。
しかしアルフレッドには懸念があった。このスローガンは、彼がなんでもできるという意味、つまり彼が全ての分野や状況や領域でエンジニアとしての能力を有しているという意味にもとれる。これは誤解を招くものであろう。他方で、開業者としての能力がどこか特定の分野や状況によって何らかの制限があるわけでもない。
アルフレッドは、選挙運動でこのスローガンを用いるべきだろうか。
アルフレッドが考えなかったようななにか別の要素はあるだろうか。
アルフレッドが自分を「万能エンジニア」として売り込むことは出来るだろうか。

−NSPE事例98-6番からの改作

(訳 須長一幸 日本学術振興会特別研究員PD(北海道大学))