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大気汚染防止基準と政府のエンジニア

 ヒラリーは州の環境保護局で働く環境エンジニアである。彼女の監督者であるパットは、彼女にある工場の発電所のための建築許可書の発行を求めた。監督者のパットは、許可の発行においては迅速に行動し、技術的な問題に関しては「いかなる厄介ごとも避ける」よう指示した。
ヒラリーは、現行の計画は大気汚染基準(1990 Clean Air Act)の規制要件を満たすには不十分であると考えていた。現状のままでは、その設備は二酸化硫黄を排出し、それらの排出の削減のためには外部集塵機が必要である。
 もし環境規制を満たしていないのに許可を発行してしまえば、エンジニアとしての免許の停止や取り消しの可能性があることを知っているので、ヒラリーはパットに、その計画は規制に違反すると考えていること、そして許可を発行しないつもりであることを告げた。パットは激しく反発した。彼は、流動化煮沸過程における石灰岩の石炭との混合によって、二酸化物の90%が除去される――これにより規制要件は満足される――と主張した。
ヒラリーとパットの間の論争は決着が付かなかった。しかし一週間後、ヒラリーは環境保護局が許可書の発行を認可したことを知るにいたった。
 今ヒラリーはどうすべきだろうか?
―NSPE事例92-4番からの改作

(訳 西村慶人 北海道大学文学研究科後期博士課程)