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低価格の申し出に対する異議

州当局は、あるハイウェイの橋の設計に着手するという決定を公表した。橋の設計を行うエンジニアリング会社のサービスの確保のために、当局は関心のある全ての会社に資質証明書を提出させるよう伝えた。当局の選抜委員によって多くの会社の証明書が精査されたのち、三つの会社が最終選考のリストに残される予定であった。そして、それらの三つの会社は、「プロジェクトの概要」に関する会議に参加した後でそのプロジェクトの価格を提出することになっていた。州当局は、価格は重要な要素ではあるが、決定に不可欠な要素ではないということを明示していた。
幾つかの会社が資格証明書を提出し、それらの会社の能力への精査がなされたあとで、当局のエンジニアリングスタッフは、オリアリー社、アリード社、ミキック株式会社の三社に絞った。その後、これらの三社の代表は、「プロジェクトの概要」に関する会議に出席し、その後でそれぞれ以下のような提案価格書を提出した。その価格書によれば、オリアリー社は $50,000、アリード社は$120,000、ミキック株式会社は$200,000を提示していた。
審議の後、当局はオリアリー社に仕事を請け負わせると公表した。さて、あなたはアリード社の社長であり、オリアリー社がそのような低い価格で入札を行ったことは不正であり、非倫理的であると信じているとしよう。そしてあなたは、オリアリー社が設計を安普請したり、将来高価な保守費用を請求したりしない限り、そのような低額でそのプロジェクトを完遂できる見込みはないと信じている。オリアリー社がそこで提示された予算内でプロジェクトを完遂させようとすれば、公共の安全を危険にさらすことにすらなるだろう。
さて、あなたは何をすべきだろうか。
当局の決定の後で、アリード社とミキック株式会社は当局に異議を申し立て、上で述べたような考えを根拠に公聴会を要求した。もしあなたがオリアリー社の社長だとしたら、これにどう答えるだろうか。州当局は、価格が優先事項にはならないと主張した後でオリアリー社の入札を受け入れるべきだったのだろうか。この状況に対するあなたの倫理的な査定に影響を与えうる追加的な情報があるとしたら、それはどんなものだろうか。

−NSPE事例80-1番からの改作

(訳 須長一幸 日本学術振興会特別研究員PD(北海道大学))