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有害廃棄物の疑い

 アレックスはエンジニアリングを学ぶ学生であり、夏の間環境エンジニアリングコンサルティング会社でアルバイトをしている。アレックスを監督するエンジニアのR.J.は、アレックスにクライアントの所有地に置かれたドラム缶の内容のサンプルを取るように指示を出した。ドラム缶の外観とにおいから判断した結果、アレックスはサンプルを分析してみれば、ドラム缶の中に有害廃棄物があることが明らかになるだろうと結論付けた。内容物が有害廃棄物を含んでいる場合は、ドラム缶の移動や廃棄には法的な認可が必要となることと、そうした事態を連邦当局および州当局に通知せねばならないことをアレックスは知っていた。
 アレックスはR.J.に考えうるサンプルの内容についての彼の推測を報告し、次に何をすべきかを尋ねた。R.J.がアレックスに指示したのは、サンプルが採取されたことを報告することだけであった。R.J.は、それを分析せよという指示は出さなかった。そのクライアントはR.J.の会社との間で別なビジネスを行っていたので、R.J.はクライアントに対して、ドラム缶がどこに保存してあるのかを教え、またそれらには疑わしい物質が含まれていることを告げ、そしてドラム缶が除去されるべきであることを示唆するようにアレックスに提案している。
 クライアントにドラム缶の存在のみを報告し、それらの内容に関するより明確な情報を提示しなかったR.J.は、エンジニアの職業的責任を果たしたと言うことはできるだろうか?学生であり、夏の間だけ雇われたに過ぎないアレックスには、もっとなしうることがあったのだろうか?
―NSPE事例92-6番からの改作

(訳 西村慶人 北海道大学文学研究科後期博士課程)