密度行列に基づく量子力学理論 1

全ての物質は量子力学に従うため、全ての情報は波動関数に含まれる。しかもこの世界には2体力しか存在しないため、波動関数より簡単な密度行列を使っても、情報は全く失われない。そこで波動関数を密度行列で置き換えた、量子力学の理論を構築する事が目的である。要するに、シュレーディンガー方程式と等価、かつ使い易い理論を作りたい、という野心的テーマである。

しかしそれは可能なのだろうか。電子は量子力学という法則に従って運動し、全ての情報は波動関数Ψに含まれる。それは次の2つの条件を満たす。

粒子が互いに力を及ぼしながら運動する場合、上の方程式から、全ての情報を担う波動関数Ψを求めるのは難しい(簡単だったらかなりの物理学者が失業するだろう)。 量子力学の特殊な場合である古典力学でさえも、この力はカオス等の複雑な現象を生み出す。これまで変分法、摂動法を始め、多くの方法が開発されたが、決定的なものは無い。

ところで、この世界は、3体力が存在しない特殊な世界である。原子核や電子の間にはクーロン力という特殊な2体力が働いている。2体力では、 粒子1が粒子2と3から受ける力が、1が2から受ける力と、1が3から受ける力の和 となる。3個の粒子があって始めて生じる3体力は存在しない。 これはどんな簡単化をもたらすだろうか? 波動関数を決める波動方程式は3体力があっても同じ形で、この特殊性を使っていない事は明らかである。

電子は全て同じ質量と電荷を持ち、区別できない事、また2体力しか存在しない事から、 知り得る全ての情報は、波動関数より簡単な、密度行列Γ(ガンマ)という関数で表現できる。 これを使っても、情報は全く失われない。

それは次の2つの条件を満たす。

密度行列を決めるこの条件は、波動関数を決める条件と全く等価である。2体力しか存在しないこの世界では、波動関数より簡単な密度行列を使っても、情報は全く失われない。ここにつけ込む余地がありそうだ。