Energy-Time Uncertainty Relations in Quantum Measurements 3

行列形式で f(t) の性質を見てみよう。Hamiltonian H の固有系を ( Ψ I , E I ) H 0 の固有系を ( Φ I , ϵ I ) とすると、式(1)と(2)は

となる。この式を見れば f(t) の各要素が t=0 で無限回微分可能である事は明らかだ。系と測定器の適切な線引きは昔から厄介な問題だったので、表題の論文のような便利な測定器があれば嬉しい。だがこの簡潔な証明から、そのような測定器が無いことが分かった。

解の存在証明は、研究を進める際に後回しにする事が多い。常識的に存在しそうな場合は多分大丈夫だが、まれに危険な場合がある。2つの方程式(や条件)の連立解を求める場合、その方程式が互いに矛盾する場合、解は存在しないし、方程式が正しく解けば解は存在しないことも分かる。しかし実際には方程式の近似解で満足せざるを得ない場合があり、この時が危険である。論理学で習う通り、AかつAでないという前提からは、任意の結論を導く事ができるからだ。この場合、Conditions 1, 2は矛盾しているので、この系について好きな結論を得る事ができる。せっかく労力をかけた研究が無意味にならないよう、気を付けたい。

論文は投稿時に、同業者がボランティアでチェックする「査読」を経ているが、まれに間違いが見つかる場合がある。事後に著者が間違いを見つけた場合、「訂正」Errataを掲載し、読者が見つけた場合、Commentsを投稿して議論する。そこで私も上記の内容のCommentsを書いてFoundations of Physics誌に送ってみたら、EditorのFedde Benedictus氏から、掲載不許可の連絡を貰った。Commentsを査読にまわさずに(つまりどちらの意見が正しいか調べずに)掲載不許可を決めたと書いてあり、この対応には驚いた。Editorが忙しいのか、この雑誌は間違いを見つけても訂正しないのか、それとも私が明らかな勘違いをしているのか。やむを得ないのでarXivに投稿した。