2. 花びらのどこにアントシアニンはあるのか?

   我々も含めてアントシアニンの化学研究者はこれまで、花弁のどこに色素が存在するかについて無頓着であった。多くの場合、花びらの表層だけに色素はある。正確に言えば、アントシアニンは表と裏の両表層細胞の液胞に溶解している。液胞は、花では細胞体積の95%以上を占める。少し前まで液胞は、排泄器官を持たない植物が老廃物を貯めるために発達させた細胞内顆粒と考えられていた。しかし、現在では、液胞膜を介して 各種イオンの勾配を作り、水を含めて様々な物質の出し入れに 積極的に関与する器官であることがわかってきた。
   花色素アントシアニンは、細胞質で生合成され、何らかの輸送系(未だに実体は不明)によって液胞へと運ばれる。生合成は、青色のツユクサ花弁では開花前の明け方数時間のうちに行われ、最終的な液胞内のアントシアニン濃度は、10-12 M以上にも達する。生きた細胞内で真の花色発現機構の解明を試みるためには、標的とする着色液胞内に何がどのくらい、どういう 状態で存在するのかを、究極的にはひとつの細胞で明らかにする必要がある。アントシアニン色素は、液胞内に単独で存在するわけではない。その発色に影響する多くの要因の総合的な結果として花色が発現する。



参考文献

  

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