6. 終わりに

   化学の黎明期から、花の色素は研究されてきた。それは、花の色が最も人に訴える力のある生物現象の一つだからと考えられる。アサガオやアジサイの実験を通して、最近ようやく、花が生物であるという認識に立った化学研究の基盤ができてきたように感じる。花の魔術はいまだ衰えず、つぎつぎと新たな課題をわれわれに突きつけてくる。アントシアニンの化学研究の向こうには、なぜ花は色を持つのかというさらに究極の問題が待ちかまえている。


 参考文献

 1. 林孝三編、”増訂 植物色素”養賢堂(1988).
 2. T. Goto and T. Kondo, Angew. Chem. Int. Ed. Engl., 30, 17 (1991).
 3. J. B. Harborne 編、”The Flavonoids, Advances in Research since 1986” Chapman & Hall, London (1994).
 4. 近藤忠雄、吉田久美、”花の色はなぜ多彩で安定か−アン トシアニンの花色発現機構”化学と生物、33, 91-99 (1995).
 5. 近藤忠雄、上田実、吉田久美、”新たに解明された花色素 アントシアニンの青色発色機構”有機合成化学協会誌、 54, 42-53 (1996).
 6. 吉田久美、近藤忠雄、”細胞内微小電極法による花色変異 の解明−アサガオの花はなぜ青色になるのか?”電気化学 および工業物   理化学、64, 1147-1152 (1996).
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 8. T. Kondo, T. Kawai, H. Tamura, T. Goto, Tetrahedron Lett., 28, 2273, (1987).
 9. T. Kondo, et al., Nature, 358, 515 (1992).
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 11. T. Kondo, et al. Tetrahedron Lett., 39, 8307 (1998).



 
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